Human Textbooks

この章は来る世界に向けて「お勧めのストーリー」としてAKがKeen-Area Newsで紹介した記事を「人類への教科書」として掲載する物である。もちろんはるとが承認済である。

2020 The New Earth A travel report【6】森をつくる

6.森をつくる


動画版に関しては私の環境では非常に明瞭にセリフが聞き取れるのだが、スピーカーの特性によっては「聞き取りずらい」らしい。
特にスマフォでの視聴はBGMだけが強調され、セリフが聞こえないのでご容赦願いたい。
初期の動画に関してはほぼそのような状態であるが、すでにアップしたものはYoutebeでは修正ができないということを、ご理解いただきたい。


しょっちゅう遊びに来ていたので、この道は知っているはずだけど、以前とはまったく様相が違っている。
僕には、もう正確な位置がわからない。

僕は方向感覚だけを頼りに、マニュエルに行き先を伝える。
途中で対向車とすれ違うたびに、マニュエルは親しげに手を振って挨拶している。

すると相手も挨拶を返してくる。
まるでみんなが知り合いみたいだ。

じきに僕も挨拶を始めると、とても良い気分になることがわかった。
しばらく僕らは黙ったままでいた。

驚いたことにハンドルがない。
代わりにマニュエルが操作しているのは、XBox用コントローラーのようなもの。

ぼんやり考え込みながら窓の外を見ると、その風景にハッとした。
僕が思い出すのは、植物がまだらに生えていて、乾燥して、耕されないまま放置された土地。

ところが今は、畑と牧草地が広がっている。
そこではあらゆるものがぐんぐん成長しているようだ。

森もある。
本物の森だ! タイムトラベル前(僕はこの考えに慣れつつあった)、僕はパーマカルチャーにすごく興味があって、自分で試したりもした。

だけど、たった5年間で島全体を森で覆えるようになるなんて、絶対考えられない。
マニュエルが僕の考えを読み取ったのか、説明しだした。

彼らはジェフ・ロートンという名前の男性には感謝しているという。
ロートンは、この20年間、自然がどのようにフローラ(植物相)を築くか熱心に研究してきた。

そしてそれを真似てロートン自身の環境デザインの中に統合した。
僕は「彼を知ってるよ、というか、彼のビデオを」と言った。

「ゼップ・ホル ツァー、ヴィクトル・シャウベルガー、Robert Briechle、アナスタシア。
僕、相 当読んだよ」彼が満足げに僕を見る。

「うん、まさにそう。
2016年に、ジェフ・ロートンを妨げるものが何もなくなったとき、彼の『砂漠の緑化』プロジェクトに数千人が集まった。

そしてサハラ砂漠のほぼ四分の一を緑に変えた。
その全いきさつが毎週TVショーで放映されたので、人々は、自分たちが変化をもたらすことができることを悟った。

たとえ身の周りの小さな範囲に限られていたとしても。
そしてパーマカルチャーが息を吹き返した。

翌2017年にはパーマカルチャーが大流行して、ご覧の通りの森となりました。
たったの3年間でだ」

「3年で??」僕は息を呑む。
「どうしたらそんなことできるの?」

「1980年代にスイスの農業関連企業の研究員が、種に特定の方法で放射線をあてると、通常よりもずっと早く、大きく育ち、収穫高も増えることを発見した。
ところが、種を販売することで儲けている会社だったので、その発見は会社の得にはならず、お蔵入りになり、それを開示することは誰にも許されなかった。

その辺の事情はわかるよね。
主流メディアがその研究結果を伝えてからというもの、世紀が変わって最初の十年間で『原始コード』(primeval code)に関する情報を、簡単にインターネットで探せるようになった。

そしてロートンのおかげで、それが再び脚光を浴びた。
彼が植えたものはすべて照射されていて、君は、その結果を目の前で見ているんだよ」

「モンサントはどうなったの? 最後に聞いたニュースでは、メキシコのトウモロコシ農家が、彼らの穀物が風を通じてモンサントの遺伝子組み換え穀物に汚染されたと訴えていたよ。

その結果、トウモロコシの原産国でさえ、自然なままの種がほとんど残っていないんだ。
その原始コードはそれらを救ったの?」

「そうだよ。
その放射線が遺伝子コードをリセットするからね。

だから原始コードという名前なんだよ。
彼らは、照射された種が、化石の中で見つかった植物に成長することを発見した。

自然に変異したものであろうが、研究室で変異させたものであろうが、種に照射すると、数百万年前の遺伝子コードが活性化されたんだ。
ここで実物を見せてあげよう」

マニュエルは車の速度を落とし、右に止めた。
降りて自分についてくるよう、僕に手を振って合図している。

数メートル先の畑の中に僕らは立っていた。
近づかないと、何の作物が生えているのかわからなかった。

彼は、今言ったことを証明するかのように、一本のトウモロコシを指さした。
「何が見えるかい?」と彼が聞く。

「えっ、そんなの簡単でしょう。トウモロコシだよ。
一本の茎に5つ実っているのじゃなくて、2、3、4、5本の茎がついていて、それぞれの茎に、えっと、10 本の実! どうしたらそうなるの?」
彼は答えずに、一つもいで僕にくれた。

「食べてごらん。2、3、4」
彼はふざけてジャングルブックのバルーを真似ている。
満面の笑みを浮かべて。

僕は皮を剥いで一口かじる。
「ちくしょう!」と頬張った口から勝手にもれた。
恥ずかしくて「すみません!」と続けた。

彼は背を丸めて笑い、「気にしないで。
情熱は時に我々をしてしきたりと作法を忘れしむる。
うまかったかい?」

「うん!」
僕の知っている味の薄いトウモロコシと違い、本当のトウモロコシ!またかじらずにはいられない。
(本当にリンゴにかぶりつくような感じだった。

お化けトウモロコシ)モグモグ食べたら、またかぶりついて頬張る。
幼い時にこんな風に立っていたことがあった。

祖父とリンゴの木の下にいた。
あまりにも立派なリンゴだったので、祖父は僕にただ見せたかったのだ。

「このことは二人だけの秘密だよ。
さもないとたっぷり食べられなくなるからね」祖父の言葉だ。

こっちの世界では不足なんてなかったんだ。
僕が嬉しそうに食べているので、マニュエルも、もう一つもぎ取ってかぶりついた。

「これ全部みんなのものなの?」
口をモグモグさせながら、僕は尋ねた。

「目で見えるものは全部そうだよ。
地平線を越えて、向こう側へぐるっと回って、あそこまで」
彼は道の反対側の畑を指さして答えた。

「今の答えは、もう地球に飢えが存在しない説明になっているかな?」彼は微笑みながら問いかけた。
僕は肯いて答えた。
信じられないよ。

「ようこそ、エデンの園へ」僕の新しい友人が、半分食べかけのトウモロコシを畑に放りながら言った。
僕は本当に、彼が幼馴染みのように感じる。

彼はとても僕に親しくしてくれる。
またもや僕の考えを読み取ったかのように彼が言った。

「オーケー、アミーゴ、まだ日は長い。
もっとドライブしよう。

神について尋ねていたね」
僕は彼の後について車に戻った。

その話題には興味がある。
2019-12-30 23:50:42
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